かねてから注目を集めていた「124 スパイダー」の全容が見えてきた。マツダ「ロードスター」のプラットフォームを流用し、マツダが生産するこのモデルは、当初予定されていたアルファロメオブランドでの登場こそなかったものの、往年の名車「124」の名を冠し、フィアットとアバルトの各ブランドから発売される。日本への導入については、どうやらハイパワーなアバルト「124 スパイダー」のみ発売されるようだ。FCAジャパンは先日、フィアット正規ディーラーの全店でアバルトの全モデルを販売開始すると発表している。これでアバルトの正規ディーラーは一気に3倍に増えるそうだが、もちろんこれは「124 スパイダー」の発売に合わせた措置だろう。
マツダ「ロードスター」の発売時は、米国仕様の2.0リットル版が日本では発売されないことに不満を感じた人もいたようだが、「124 スパイダー」ではまったく逆の状況になるということのようだ。マツダ「ロードスター」の日本仕様は131PS、フィアット「124 スパイダー」は140PS、そしてアバルト「124 スパイダー」は170PS。車重が違うことを忘れてはいけないが、それでもその走りは、「ロードスター」オーナーも大いに気になるところだろう。発売される日が楽しみだ。
○日本と欧州の合作モデルの歴史を振り返る
ところで、欧州と日本のメーカーがタッグを組み、いわば「日欧合作」モデルを誕生させるのは、今回が初めてではない。レアケースではあるものの、これまでにいくつかの前例がある。この機会に振り返ってみよう。
日欧合作で最も有名なモデルは、やはりアルファロメオ「アルナ」ということになってしまうだろう。「なってしまう」というのは、このモデルは世紀の失敗作として、その名を馳せているからだ。「アルナ」は
しかし、「アルナ」は5年ほどで販売を終了し、両社の合弁も解消された。「アルナ」はアルファロメオ「スッド」からエンジンなど多くのメカニズムを流用し、エクステリアデザインは
その後、
ところで、そもそも
日本メーカーは輸出から海外生産へシフトすることを余儀なくされたが、その副産物というべきか、日本メーカーが進出した先の現地メーカーとさまざまな形でコラボする例が見られた。たとえば
○
イギリスの自動車メーカーの変遷は非常に複雑なので詳しい説明は避けるが、
しかし「イギリス製
ローバーは小さな高級車という伝統を持ち、とくにレザーやウッドパネルを多用した豪華なインテリアには定評があった。当時の
一方のローバーはBLの経営難で新型車の開発費用が不足しており、同時に生産するモデルの信頼性向上が急務だった。つまり、お互いにメリットの大きいwin-winの業務提携だったといえる。
この提携により、
○欧州メーカーと日本のサプライヤーとのコラボ
自動車メーカー同士ではなく、欧州メーカーが日本のパーツサプライヤーと手を組んだ例もある。たとえば
その「XJ」の、2代目モデルのビッグマイナーチェンジ後のモデルとして、1994年に登場したのが「X300系」。このモデルは、
ちなみに、日本製のパーツは意外と欧州メーカーにも採用されており、たとえばアイシンAWがトランスミッションと並んで事業の柱としているカーナビは、
さて、ここまで日欧合作モデルを振り返ってきたが、そこには成功例もあるものの、際立った名作といえるモデルは見当たらないようだ。では、これから世界中のスポーツカーユーザーの審判を受ける「124 スパイダー」はどうなのか。日本車の技術と欧州車の感性が融合した、これまでにない名車となる見込みは十分にある。期待して発売を待ちたい。