

○終着点ではなく通過点と位置づけた4年後のカタール大会
取り囲んだメディアの爆笑を何度も誘ったかと思えば、含蓄があり、ウィットにも富んだ言葉でうなずかせる。顔ぶれが一気に若返った新生日本代表のなかで、32歳とベテランの域に達した長友佑都が放つ存在感は際立っていた。何しろ長友自身が、こう公言してはばからない。
「ハセ(長谷部)さんみたいに真面目に、あるいは(

パナマ代表と


まだ記憶に新しい今夏のロシア大会を含めて、3度のワールドカップをともに戦ったキャプテンのMF


チームがさらに進化していくためには、世代交代は避けては通れない。勝負の世界における掟だと理解しながらも、可能な限り抗ってみせることがレベルアップにつながると信じながら、長友は約3カ月ぶりに日の丸を背負った。
「やるからには4年後のカタール大会は終着点ではなくて、通過点だと思っているので。そこは自分のなかでも覚悟は芽生えています」
29歳の佐々木翔(

何よりもトルコで映像を介して見た、森保ジャパンの初陣となった9月のコスタリカ代表戦に衝撃を受けていた。画面の向こう側で23歳の

「また違った日本代表を、若い選手たちが見せてくれた。試合に出始めたばかりの若いころの僕たちのようにギラギラした、何も恐れないプレーを。僕自身も初心というか、原点に返れたような気がする」
○新キャプテン・吉田麻也を若手の前でいじった理由
パナマ戦を前にして、

ベルギー代表に悪夢の逆転負けを喫し、まだ見ぬベスト8以降の世界へと通じる扉を無情にも閉ざされたロシア大会の決勝トーナメント1回戦。直後に代表引退を表明し、8年間にわたって務めたキャプテンも返上した長谷部との思い出をたどりながら、人目をはばかることなく号泣したのが吉田だった。
「無理をしてハセさんみたいに振る舞う必要もない。僕にできるリードの仕方があると思うし、自分が信じる道、自分が正しいと思うリーダーシップを発揮できれば。ポジション的にも立場的にもチームを引っ張っていかなければいけない、ということも重々理解しているので、いつも通りやるだけです」
たとえ左腕にマークを巻かなくても、精神的な部分で新たに船出する日本代表をけん引していくと心に決めていた吉田は、ハリルジャパン時代からこんな言葉を残してきた。そして、実際に大役を託され、決意を新たにする後輩を見た長友はサポート役に徹していくと心に決めている。
「なかなかハセさんの後のキャプテンは大変なので。とにかく真面目だったし、キャプテンの概念というものをハセさんが変えたような気もするので。そういう真面目さが吉田にあるのかと言えば、ちょっとはてなマークですけど、だからこそ彼なりのキャプテンシーを見せてくれるんじゃないかと」
一見すると強面で、威風堂々とした存在感を放つ吉田だが、実は日本代表で長くいじられキャラを担ってきた。そうした部分を見せることで、代表歴の浅い若手選手たちとの距離も縮まっていく。キャプテンに指名された直後の練習でさっそく吉田をいじり、周囲の笑いを誘ったのが長友だった。
「キャプテンということで、背負いすぎたりする部分もあると思うので。吉田は吉田だし、だからこそ彼のおちゃらけた部分をどんどん突っついていって、彼のよさを引き出しながらキャラを浸透させていきたいと思っています。なかには『吉田さん、ちょっと怖いのかな』と思っている若手もいるかもしれないので」
○波瀾万丈に富んだ濃密な生き様を次世代へ伝えていく意味
もっとも、自他ともに「熱い」と認める自身のキャラクターを、長友は半分封印するつもりだった。
「宇宙の話やら生きる意味などを圭佑と熱く話してきましたけど、それを若い選手たちにいきなりすると、おそらく引かれて終わってしまうと思うので。ちょっと距離感を測っています」
森保ジャパンに初めて合流した直後の長友は、苦笑いしながらこんな思いを明かしていた。しかし、我慢できたのも数日だけだった。


「僕の前の席は19歳冨安と22歳

初めて日本代表に招集されてからちょうど10年。その間にFC

「チャンスがあるのならば、とにかくビッグクラブへ移籍してほしいですね。よりレベルの高い選手たちと一緒にプレーすることで、さらに見えてくるものもある。厳しいサポーターやメディアの下で勝負することを、彼らにも経験してほしい。技術だけでなく、精神的な部分でも必ず学ぶものがあるので」
7年間プレーしたインテル・ミラノ時代を引き合いに出しながら、波瀾万丈に富んだ生き様を遠慮することなく次世代へ伝えようと決めた。昨夏からプレーするオランダからのステップアップを目指す

堂安だけではない。左サイドバックで先発フル出場したウルグアイ戦で3試合連続ゴールを決めた

「気持ちがいいよね。イケイケだし、恐れることなく伸び伸びと楽しんでプレーしているから。テンポも速いし、おっさんはついていくのが必死でした。これだけ技術があって、上手い若手たちを見ていると、こちらは体を張らなかったら次からはもう呼ばれないと思って熱いプレーをしました。所属クラブで試合に出られないとか、パフォーマンスが悪くなってしまったら『長友、さようなら』となるはずなので」
タイミングを見ながら周囲をいじり、世代間を融合させる潤滑油的な存在として。積み重ねてきた経験の伝承者として。そして、32歳にして衰えるどころか進化と成長を続ける鉄人として。まさに「一人三役」を担う長友が、森保ジャパンのなかで早くも絶対的な居場所を築きつつある。
■筆者プロフィール
藤江直人(ふじえ なおと)
日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、


