
「男女雇用機会均等法」施行から30年。この節目に、企業の女性登用のレベルを「見える化」することで、女性の社会進出がさらに加速することが期待される「女性活躍推進法」が施行された。現在企業は業界や職種によってその進捗度合いはバラバラだが、女性活躍の先進企業は今、育児をしながらも仕事を続けるための両立支援から次のフェーズに移行している。そこにも新たな課題が見えてきている。その課題とは何か。
○ 育休から復帰後も戦力として期待する企業
3月、


「企業がみなさんに期待していること、それはまさしく戦力なのです。貢献できる存在ということです。『私ではない』という人がいるかもしれないですが、少なくともそういう時代に生きているのです」と、集められた女性社員の前でそう話し始めたのは、

会場で話を聞いていた筆者は驚いた。女性を雇用の調整弁として使い捨てる企業もある。そんな中、戦力として職場に戻ってくることを期待されているというのは、女性にとってうれしいことかもしれない。一方でブランクがあり、これから時間的な制約がある中で働く彼女たちからすれば、戦力として求められることは、心の負担になる恐れもあると思ったからだ。
復職セミナーに参加した吉田史絵さんは「『あなたに期待している』ということが伝わって、実はプレッシャーに感じました。気を引き締めていかなくてはならない」と話した。
「ちょっと今回は厳しいことを言ったかもしれません」と小嶋さん。

いままで復職セミナーに参加する際、子どもの一時預かり先が見つからなかった人には、子連れ参加を認めていたのだが、今年は認めなかったという。「子どもを連れてくることが駄目だというわけではありません。ただ預け先を見つけておかなくてはならないのだから、『働く準備をしてください』という意味です」と小嶋さん。
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吉田史絵さんはこの4月で入社14年目。ソリューションのコンサルタントをしている。役職は、主任だ。6年前に双子を出産して以来、2度目の長期休暇になる。0歳児から2歳児までを預かる小規模保育に子どもを預けることが決まったが、「2歳までなので、3歳までにどこかの保育園に入れたいと思っている。入れなかったら幼稚園という選択肢も考えている」と話す。
○復職のために外部の助っ人を準備
「以前復職した時は、どんなに大変か分かっていなかった」と吉田さん。復職後にどうやって育児と業務を両立したらいいのか、復職セミナーでは、専門家から具体的なアドバイスもあった。吉田さんはセミナー後、自動で動く掃除機など最新家電を買ったり、区の子育て支援サポートに登録したりしたという。「1つの方法に頼るだけでなくて、多方面で外の力を積極的に利用して、何かあっても休まなくていいようにしたい。その方が気分的にも安心」と話す。取材した時は、これから家事のサポート先を探すとのことだった。
○主任以上の女性社員全員対象とする個別育成計画書



「女性社員は使い捨てのリソースではありません。会社の資産なので価値を高め、利益に貢献できるようにしないとならない。だから本人の思いとは違うかもしれないけれども、会社は計画書を作っています」(小嶋さん)という。
対象になっている吉田さんは、職場の上司とはすでに面談をしていて、復職後の仕事の内容や役割が決まっている。「2回目なのでなんとなく想像できる。うまくやれるかなと思う」。また今後のキャリアについては、「無理しすぎないで、でもちょっと背伸びをすることもやりたいと思っている。自分らしく楽しく仕事ができる人になりたい」と語った。
○足掛け10年

2010年に日立ソフトウェアエンジニアリングと




「本当にゼロベースの取り組みだったら、こんなにはできなかった」(小嶋さん)。女性の復職者が増え、管理職の中でも2、3割を占めるという。「育児と両立することと活躍することが二律背反のものではない事例が増えてきた」と手ごたえを感じている。20年までに管理職に占める女性の割合を40歳以下は30%、45歳以下は20%、全体では10%にすることが目標。今後は、ダイバーシティマネジメントに関する管理職の意識改革や、柔軟な働き方の浸透といった残りの課題に対し継続して改善を進めるそうだ。
●女性活躍に向けた日本企業の課題は
○キャリアを守るために両立をマネジメントする時代
「



○先進企業が真っ先に直面する課題
田中准教授によると、ここには新しいタイプの離職者の発生を招く可能性があるという。「女性自身がフェーズの切り替えについていけなくなる可能性がある」。意欲があってプランがある人はやりやすいだろうが、ついていけない人が生まれる。そういった人のモチベーションをどうやって上げさせるかという課題があるが、そこに対しての答えは今のところ出ておらず、企業は模索を続けているという。
○社会全体の女性活躍の取り組み
「一億総活躍社会」の実現を目指す政府。子育て支援や介護支援、高齢者雇用の促進によって労働人口を増加させ、さらに非正規労働者の待遇改善や、最低賃金を引き上げることによって、消費支出を2025年度には20兆4000億円押し上げるとの試算を内閣府は直近で出している。女性の活躍推進に関わるのは上記の試算の中で主に子育て支援や介護支援の部分だろう。日本全体の経済成長にとって女性登用の拡大は重要になっている。「2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%に」というスローガンを掲げる政府は、その1つとして昨年の夏、「女性活躍推進法」を成立させ、この4月から施行した。この法律で中央官庁、地方自治体、301人以上の従業員がいる企業は、組織内での女性の活躍状況の把握や課題を分析をした後、今後の行動計画の策定、それを届出た後に情報を公表することなどが義務づけられた。期限は2016年4月1日。
○女性活躍推進法後の課題
女性活躍推進法について田中准教授によると「成立から施行までが半年では、期間が足りない」と指摘する。

○行動計画未提出が3割
実際フタを開けてみれば、4月1日現在、行動計画の提出を義務付けられた全国およそ1万5000社のうち、約3割が未提出と厚労省が発表。今後政府はどうしていくのだろうか。厚労省は、「今後、従業員301人以上の大企業のうち、一般事業主行動計画を策定・届出していない企業に対して都道府県の労働局が、電話などを使って、策定・届出を個別に強力に働きかける『ローラー大作戦』を実施し、女性活躍推進法の着実な履行確保を図っていきます」としている。